2011年9月28日 (水)

日光居酒屋 【女子競輪】化粧も恋愛も禁止。モデルから転身した田中麻衣美の挑戦

【キャンペーンガールからプロ競輪選手へ】

 女子競輪、通称『ガールズケイリン』の華をご存じだろうか。ヴィーナスのごとき”美しさ”と、アマゾネスのごとき”強さ”を併せ持つ競輪選手の卵である。

 田中麻衣美、28歳。新潟県出身。中学、高校では陸上競技の短距離選手だった。卒業後はエステティシャンとウエディングモデルをしていた。いわゆる新潟美人がただいま、来年7月に始まる女子ケイリンに向け、静岡県修善寺の日本競輪学校で自転車漬けの毎日を送っている。

「女子が競輪なんて……」。そんな巷(ちまた)の声に田中は反発する。実はとても負けず嫌い。二重まぶたの目からは強い意志が感じられる。
「オンナでも自転車に乗れるところを見せたい。”できるわけない”と言われると、ちょっとカチンッときます。絶対にできると思いますから」

 台風が接近中の7月某日。競輪学校を訪ねると、雨のために室内でローラー練習を行なっていた。三本のローラーの上にレーサー(自転車)を乗せ、ペダルをこぐ。バランスを崩すと、ローラーから転落する。落ちないよう、リズミカルにこいでいく。高速の”もがき(ラストスパート)”では遮二無二(しゃにむに)ペダルを踏む。顔をゆがめ、もがき続ける。束ねた髪が揺れる。汗が飛び散る。

「もう”無”の心境です。歯を食いしばって、おなかに力を込めて、ペダルを回し続けます」

 なぜ、競輪を? もう何百回も聞かれてきたであろう質問をぶつけると、チャーミングな笑顔で丁寧に答えてくれた。

 遡(さかのぼ)ること、2008年7月。ひょんなことから、地元新潟の弥彦競輪場のイベントで、女子ケイリンのエキシビションチームのメンバーになった。自転車の経験はゼロだった。
「運動ができて人前に出られる子を、友だちが探していたんです。10年ぐらい運動をしていなかったので、自転車に乗れるかどうかわからないと躊躇(ちゅうちょ)したんですが、『とりあえずバンクを走ってみて』と言われて……」

 そのまま競輪のキャンペーンガールを続け、転機が訪れたのは昨年2月。初めてピスト(トラックレースに使用する自転車)に乗って、本格的な「ガールズケイリン」に出場する羽目になった。女子自転車のトップ選手が集まる合宿に参加させられた。力の差に愕然(がくぜん)とする。

「タイムにすっごい差があった。吐いたり、風邪をひいたり、落車したり……。精神的にも、肉体的にもすごくきつかった」
 レースに出るのはもうやめようと思った。だが、ガールズケイリンのコーチに言われた。「ここで逃げたら、おまえは終わりだ」と。

 生来の負けじ魂に火がついた。結局、レースに出場した。ダントツの最下位。レースを追う画面に姿が映らなかった。悔しくて泣きじゃくった。
「がんばっても、がんばっても、差が縮まらなかった。でも遠くからきたファンの方から『よくがんばったね』と言ってもらえたのです。それがうれしかった」

【1年半で見せた成長 「もっと、もっと速くなりたい」】

 田中は覚悟を決めた。そして昨年4月、ガールズケイリンの育成チーム、新潟の『クラブ・スピリッツ』に入った。強豪選手とともに練習に励んだ。日本競輪学校にも合格し、復活女子ケイリンの卵として規律と鍛練の日々を過ごしている。

 今や記録は飛躍的に伸びている。課題が上半身の筋力、瞬発力。先の競輪学校の体育祭ではアームレスリングで2位となった。166cm、60kg。腕も太ももも少し太くなった。気のせいか、顔もたくましくなった。

 競輪学校は化粧も恋愛も禁止だ。
「ははは(笑)。最近、化粧してないほうがイイねって言われます」

 恋愛はひと休み、目下、自転車が恋人みたいなものである。趣味は温泉、お酒、カラオケ。十八番が演歌で『津軽海峡・冬景色』『津軽じょんがら節』という。「お酒を飲みながら演歌を歌いたいな」。夢は「南国に住むこと」。

 人に負けたくない。自分にも負けたくない。目標はもちろん、プロの競輪選手。

 今年の7月上旬、地元の弥彦競輪場でガールズケイリンのエキシビションレースに出場した。かつてキャンペーンガールとして遊びで走っていたところだ。

 今度は真剣勝負だった。だんご状態でゴールした。最下位だったけれど、接戦だった。満員の観客から、あたたかい拍手を送られた。「マイミちゃん、お帰り~」「よくやった」との掛け声ももらった。

 場内の声援が田中の胸に響いた。日焼けした新潟美人がつぶやく。
「自分の中では全然、成長できています。もっと、もっと速くなりたい」

 より速く、より強く、そしてより美しく――。負けん気の塊(かたまり)のごとき、女子ケイリンの華がバンクを駆けていく。

田中麻衣美(たなか・まいみ)
1982年8月11日生まれ。新潟県出身。2008年に新潟・弥彦競輪のキャンペーンガールになったのをきっかけに、女子競輪の道へ。現在は、2012年7月にスタートする『ガールズケイリン』の一員を目指し、第1回生徒として日本競輪学校で日々鍛錬を重ねる。得意戦法:先行。脚質:スプリンター。血液型B。

松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu

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